平成24年改正
*平成24年改正
基本的な考え方
介護事業者の検討課題
「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の創設に伴い、既存の介護事業者特に訪問介護事業者にとって大きな影響があります。
なぜならば、
- 「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を利用した利用者は、既存の訪問介護を利用できないこと。
- 「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、1つの事業者が一定のエリア内(中学校区のイメージ)を独占し、後から参入できないこと。
- さらに、創設された「「サービス付き高齢者向け住宅」 では、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が組み込まれていますから、高齢者住宅が建設されると そこに移り住んだ高齢者は、既存の訪問介護を利用しなくなる可能性 があります。しかも、10年間で60万戸という膨大な数が計画され ています。
以上から訪問介護事業者は、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を
- するかしないのかの判断
- しないとするとどうするのかの判断
をしなければいけません。
「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の人員基準や設備基準はお盆前後に、介護報酬の単位は今年12月末には公表されますから、そこで収支のシュミレーションをして、上記1と2の判断をしなければなりません。
(ご参考)
24時間サービスのモデル事業 定員割れ
「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の在り方を検証するモデル事業を実施する自治体が、目標の60市町村に対して43市区町にとどまっていることが分かった。 今年4月に行われた第1次募集に応募したのは26市区町。5月の第2次募集で決まった17市区と合わせても、事業を実施する自治体は43市区町と、計画の7割程度にとどまっている。 応募が低調な理由について、厚労省老健局振興課は、「市町村が検討委 員会を設置し、事業内容を検証する点に負担を感じ、応募を控えているのではないか」としており、近く始める予定の追加募集では、検証作業にかかわる要件を緩和する方向で検討している。
ジャパンケア 24時間訪問サービスの拠点整備を本格化
ジャパンケアサービスグループはこのほど、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の創設を見据えて、24時間体制の訪問介護サービスの拠点整備を本格化させる方針を明らかにした。 現在は東京都世田谷区で提供しているが、来年3月末までには都内での提供エリアを28区市に拡大するほか、横浜市と川崎市、千葉県柏市、大阪府豊中市、仙台市、札幌市の一部地域でもサービスの提供を始める。また、一部の市町村では24時間サービスに関する厚生労働省のモデル事業の受託も目指す。
継続的アセスメント前提(介護・看護職員が共同で行う)
在宅生活を包括的かつ継続的に支える観点から、
- 介護・看護双方の知見に基づく継続的アセスメントを行い、
- 介護職員と看護職員が情報を共有しながら、
一体的にサービスを提供することが重要です。
具体的には看護職員は、
- 利用者に対する定期的なモニタリング・アセスメント
- 訪問看護指示書に基づくサービス提供
- 体調急変時の判断や医師との連携
- 介護職員に対する療養上の助言
等を行う。
24時間対応(オペレーターによるコール対応)
在宅高齢者からの随時のコールに適切・迅速に対応するためには、定期訪問で把握し蓄積した日々のアセスメント情報に基づいて、利用者に対して十分に説明し合意に基づいて、
- 通話対応
- 訪問
- 他の専門機関等に連絡
する等の方策を適宜活用し解決を図ることが重要である。
このような職務を十分に遂行するため、
- 随時のコールに対応する職員は、一定の知見と実務経験を有するものを配置する。
- 看護の専門知識を有する職員からの助言が常に得られるような体制を確保すべきこと。
*時間に制約されないケア(ケアプランで設定)
定期訪問の
- 回数
- タイミング
- 提供時間の長さ
について、事前に訪問計画が立案されるものの、実際のサービス提供においては、施設におけるケアと同様に、利用者の心身の状況に応じて、提供時間の長さを延長または短縮したり、提供のタイミングを変更しながら必要なサービスを提供する。
一日複数回の定期訪問と随時対応(朝晩の集中時間帯が問題)
一日複数回の訪問によるサービス提供を行うことで、心身の状況について介護及び看護の視点から常にアセスメントを行うことが前提となる。
利用が集中する特定の時間帯に対応するため、常勤職員に加えて短時間勤務職員も組み合わせたシフトが必要である。
*介護と看護の一体提供
*対象は要介護者全体へ(小規模多機能同様1~2は低額?)
*包括定額方式の報酬体系
*エリア内の事業者数は市長村が判断
控えているのではないか」としており、近く始める予定の追加募集では、検証作業にかかわる要件を緩和する方向で検討している。
介護職員の医療行為
介護福祉士と一定の研修を受けた介護職員は、保健師助産師看護師法の規定にかかわらず、診療の補助としてたん吸引などの行為が行えるようにする。また、事業の一環としてたん吸引などの業務を行う事業者は、事業所ごとに都道府県に登録する仕組みにする。
厚生労働省老健局高齢者支援課「介護保険制度の動向について」より
介護サービス事業者の労働法規の遵守
介護事業を含む社会福祉関係の事業は、全産業と比較して労働基準法等の違反の割合が高い。
社会福祉施設の違反事業場比率は77.50%で、 全産業の68.50%と比べて9%高い。
※社会福祉施設には、特養、老健、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、訪問介護事業所等の居宅サービス事業所、グループホーム、有料老人ホーム等のほか保育所や障碍者福祉施設・事業所が含まれている。(資料出所:平成20年労働基準監督年報)
厚生労働省 平成23年2月 「介護保険法改正案について」より
以上を背景にして、改正介護保険法では次の条文が盛り込まれました。
次のいずれかに該当する者については、介護サービス事業者の指定等をしてはならないものとする。 ①労働に関する法律の規定であって政令で定めるものにより罰金刑に処せられ、その執行を終わるまでの者、又は執行を受けることがなくなるまでの者 ②労働保険の保険料の徴収等に関する法律により納付義務を負う保険料等の滞納処分を受け、引き続き滞納している者
都道府県知事又は市町村長は、指定地域密着型サービス事業者が上記①に該当するに至った場合には、指定の取消し等を行うことができることとする。
労働基準法に違反して、罰金刑以上になった者については指定を認めない、及び現にサービスを提供している事業者が罰金刑を受けたときは指定を取り消すというものです。事業者が複数の事業所を経営している場合は、違反した事業所のみか、同一法人の事業所全てか等、気になる課題もあります
労働基準監督年報によれば、労働基準法違反により送検された社会福祉施設は、
平成18年 11件
平成19年 15件
平成20年 11件
で、毎年10件程度が労働基準法違反で送検されています。
罰金刑を受けるのは、是正勧告を再三無視するなどの悪質なケースです。
現在のところ、上記のとおり労働法規違反で刑罰を受ける介護事業者はごく少数ですが、改正介護保険法をきっかけに監督官庁の労働法規遵守に関する指導が増えるものと予想されます。
複合型サービスの創設
「複合型事業所」について、当初
- 訪問介護+訪問看護
- 小規模多機能型居宅介護+訪問看護
の2通りが考えられていましたが、改正案では「小規模多機能型居宅介護+訪問看護」だけが創設されることになりました。
ただし、将来的には色々な組み合わせが出てくる可能性があります。
厚生労働省 平成23年2月 「介護保険法改正案について」より
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 介護職員に医療行為
- 労働法規の遵守
- 小規模多機能型+訪問看護
上記1~4以外の主な改正案の内容は、次の通りです。
自治体による主体的な取り組みの推進
市町村が定める地域密着型サービスの独自の介護報酬について、基準額以上を設定する場合でも、一定の範囲内ならば厚労相の認可なしに報酬設定ができる。また、現行制度では、市町村が別の市町村にある地域密着型サービス事業所を指定する場合、事業所のある市町村長の同意を得る必要があるが、改正案では、事前に両市町村長の合意があれば、個別の同意がなくても指定が可能な仕組みに改める。
さらに、訪問介護などの居宅サービス供給量が市町村の介護保険事業計画の見込み量に達している場合、市町村は都道府県に事業者の指定に関する協議を求めることができる。都道府県はこの協議に基づいて居宅サービス事業者の指定を取りやめたり、指定の際に条件を付けたりできる。
このほか、市町村は定期巡回・随時対応型訪問介護看護などの事業者指定について、公募で行うこともできる。公募指定の有効期間については、6年を超えない範囲で市町村が定める。
介護サービス情報の公表制度の見直し
事業者に義務付けられている介護サービス情報の公表制度については、都道府県が適正な調査を担保できるようにするため、厚労省のガイドラインで調査すべき事案を明確化する。
介護予防・日常生活支援総合事業の創設
介護予防サービスや配食・見守りといった日常生活支援サービスを総合的に実施できる介護予防・日常生活支援総合事業を創設。事業の導入は市町村の判断に委ねる。各利用者が介護保険の予防給付と新たな総合事業のどちらを利用するかは、市町村や地域包括支援センターが状態像を踏まえて選ぶ。
地域包括支援センターの機能強化
地域包括支援センターについては、介護サービス事業者や医療機関、民生委員、ボランティアなどの関係者と連携する努力義務規定を設ける。また、委託型の地域包括支援センターに対しては、市町村が事業実施に当たっての方針を明示する。
介護保険事業計画の見直し
市町村が介護保険事業計画にできる限り盛り込む事項として、▽認知症の人の日常生活の支援に関する事項▽医療との連携に関する事項▽高齢者の住まいについての施策―を明記。なお、計画の立案に当たっては、高齢者の状況や環境などのニーズ調査を実施し、その結果を勘案するよう努めるべきであることも示された。
都道府県の介護保険事業支援計画については、高齢者居住安定確保法に基づく高齢者居住安定確保計画との調和を保って策定することとした。
保険料上昇の抑制
介護保険料の急激な上昇を抑制するため、都道府県は12年度に限って財政安定化基金の一部を取り崩すことができる。
有料老人ホームなどの入居者保護
有料老人ホームや認知症高齢者グループホームに対し、入居者保護契約の締結を義務付ける。具体的には、入居後一定期間内に契約が解除されたり、入居者が死亡したりした場合に、受け取った前払金から一部を除いた金額を返還するとの内容の契約を結ばなければならない。
後見業務の人材を育成
都道府県や市町村は、後見や保佐、補助などの業務を適正に遂行できる人材の育成に努める。
介護療養病床、廃止期限を6年延長
現在は11年度末とされている介護療養病床の廃止期限を6年間延長し、17年度末とする。12年4月以降は新設を認めない。
介護福祉士国家資格の取得方法見直しの延期
12年4月の施行を予定している介護福祉士国家資格の取得方法見直しについては、施行時期を15年4月に延期する